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痛風

痛風とは

痛風は、血液中の尿酸という物質が過剰に増えることで関節に結晶化し、炎症を引き起こす病気です。この結晶化した尿酸(尿酸塩)が関節内に蓄積されると、免疫反応によって激しい炎症が生じ、「痛風発作」と呼ばれる突発的な痛みをもたらします。通常、発作は足の親指の付け根(第一中足趾関節)に起こりやすいですが、膝や足首、手首など他の関節にも現れることがあります。

尿酸は、体内の細胞や食物に含まれる「プリン体」が分解されたときに生じる老廃物のひとつで、腎臓から尿として排出される仕組みになっています。しかし、尿酸の産生が過剰になったり、排出が不十分だったりすると、血中濃度が高まり「高尿酸血症」となります。この状態が長く続くと、やがて結晶が形成され、痛風が発症します。

痛風は、単なる一時的な関節炎ではなく、慢性的な尿酸代謝異常が関係する病態であり、適切な治療を行わなければ、腎臓病や動脈硬化など、全身に及ぶリスクも抱えていることを理解する必要があります。

かつては「中高年の男性に多い病気」というイメージが強かった痛風ですが、近年ではその発症年齢が若年化しており、20〜30代の男性の間でも増加傾向にあります。厚生労働省の統計によると、日本における高尿酸血症の有病率は年々上昇しており、推定患者数は約600万人を超えるとされています。

この背景には、食生活の欧米化(肉類・脂肪・アルコールの多量摂取)や、運動不足、過労、睡眠不足といったライフスタイルの乱れが挙げられます。さらに、エナジードリンクや加工食品の普及により、プリン体の摂取量が増加していることも要因のひとつです。

また、コロナ禍以降の在宅勤務による運動量の低下や、アルコール摂取の増加が、痛風の発症率を押し上げているともいわれています。こうした社会背景を考えると、痛風は誰にとっても他人事ではなく、現代における「新たな国民病」として警戒すべき疾患であることがわかります。

尿酸値は、通常の健康診断や血液検査で簡単に調べることができます。以下の数値が基準となります。

正常範囲 尿酸値(mg/dL)3.6~7.0
境界域 尿酸値(mg/dL)7.1~7.9
高尿酸血症 尿酸値(mg/dL)8.0以上

7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と判断され、医師の指導によっては薬物療法や生活改善が必要となります。特に尿酸値が8.0を超える場合、発作のリスクが著しく高くなり、痛風の前兆として注意が必要です。

痛風の症状

痛風の症状は非常に特徴的で、何の前触れもなく突如として関節の激しい痛みと腫れが現れるのが最大の特徴です。特に、足の親指の付け根に症状が出やすく、朝方に発症することが多いとされています。この痛みは「風が当たるだけで痛む」と形容されるほどで、多くの患者が歩くことすら困難になるほどの激痛を訴えます。

発作の始まりは、違和感やかすかな痛み程度であることもありますが、数時間以内にその痛みは頂点に達し、患部は赤く腫れ、熱を持ちます。発作は数日間続くことが多く、自然におさまることもありますが、根本的な治療を行わないまま放置すると、次第に発作の頻度が増し、症状が重く長引く傾向にあります。

初期の痛風発作は一つの関節に限定されますが、繰り返すうちに複数の関節へと広がることがあります。また、発作時には発熱や全身の倦怠感を伴う場合もあり、インフルエンザや細菌感染と誤解されることもあります。発作が繰り返されるたびに関節のダメージが蓄積し、やがて関節の変形や可動域の制限といった後遺症に繋がることもあるため、決して軽視できない病気です。

痛風を放置した場合、慢性化して「痛風結節(つうふうけっせつ)」と呼ばれる尿酸の塊が皮下や関節に形成されることがあります。特に耳たぶ、肘、足首、手の指関節などにできやすく、見た目にも目立ちやすいものです。これが大きくなると、周囲の組織を圧迫し、関節の運動を妨げたり、皮膚が破けて結節が露出することもあり、感染のリスクも高まります。

痛風の原因

痛風の根本的な原因は「尿酸値の異常上昇」です。尿酸は、体内の細胞や食事に含まれるプリン体という物質が分解された結果、最終的にできる老廃物です。通常は腎臓を通して尿として排泄されますが、これがうまくいかないと血液中に蓄積し、やがて結晶化して関節などに沈着し、痛風発作を引き起こします。

尿酸値が高くなる背景には、大きく2つのメカニズムがあります。

ひとつは「尿酸が体内で過剰に作られてしまう」場合。これは主にプリン体の多い食品やアルコールの過剰摂取が原因です。レバーや魚卵、肉類などを頻繁に大量に食べたり、ビールや日本酒などアルコールを日常的に摂取する人は、尿酸の生成量が増えやすい傾向にあります。

もうひとつは「尿酸の排出が不十分な状態」です。日本人に多いタイプで、腎臓の機能が尿酸をうまく排泄できないため、血中に尿酸が残ってしまうのです。水分摂取が不足している人や、腎機能が低下している中高年層では、この傾向が顕著に見られます。

痛風の診断方法

痛風の診断では、血液検査による尿酸値の測定を中心に、患者の症状や発作時の状態、さらには関節の状態を総合的に評価する必要があります。特に痛風は、発作時に激しい痛みを伴うため、それに伴う症状と検査結果の一致が重要な判断材料となります。

まず行われるのが、血液検査による尿酸値の測定です。一般に、尿酸値が7.0 mg/dLを超えると「高尿酸血症」とされます。ただし、痛風の発作が起きているときには、体が炎症反応により尿酸を一時的に関節などに移動させるため、血中の尿酸値が一見「正常値」に見えることもあります。つまり、尿酸値だけを見て診断を下すのではなく、患者の症状と経過の観察も極めて重要なのです。

加えて、関節の状態を直接調べる検査もあります。代表的なのが「関節液検査」で、発作を起こしている関節に注射針を刺し、内部の滑液を採取して顕微鏡で調べます。もし、その中に「尿酸結晶」が確認されれば、痛風と確定されます。この検査は、他の関節炎(細菌性関節炎やリウマチなど)と区別するためにも重要です。

さらに必要に応じて、X線や超音波、MRIといった画像検査が行われることもあります。痛風が長期間放置されると、骨の変形や関節の破壊を引き起こすことがあり、その程度を把握する目的で実施されます。

発作時には、医師が症状を的確に判断できるよう、「どの関節が、いつ、どのように痛み出したか」「過去に同じ症状があったか」などを記録しておくと、診断がスムーズに進みます。また、家族に痛風患者がいる場合や、肥満・飲酒習慣の有無などの生活背景も診断の参考材料となります。

痛風の診断は、単一の検査結果だけでなく、問診・身体所見・検査を組み合わせた総合的な判断に基づいて行われます。したがって、自己判断で済ませず、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。

痛風の治療方法

痛風の治療は、急性発作の痛みを和らげる「対症療法」と、尿酸値を安定させて再発を防ぐ「根本治療」の2本柱で構成されます。これらは互いに補い合い、長期的に症状をコントロールするためにどちらも欠かせません。

まず、痛風発作が起きた際には、激しい関節の痛みと腫れに対して、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使われます。コルヒチンという薬も、発作の初期段階において炎症を抑えるのに有効とされています。痛みが非常に強い場合には、短期間のステロイド投与が選択されることもあります。これらの治療によって数日で症状は改善しますが、これだけでは根本的な治療とはいえません。

発作の治療がひと段落した後は、尿酸値のコントロールが本格的に始まります。尿酸を減らす薬には、尿酸の生成を抑える「アロプリノール」や「フェブキソスタット」、尿酸の排泄を促す「ベンズブロマロン」などがあります。これらの薬は毎日決められた量を継続して服用することが重要で、症状が落ち着いても自己判断で中止するのは非常に危険です。なぜなら、治療を中断すると再び尿酸値が上昇し、発作が再発したり、合併症のリスクが高まったりするからです。

また、食事と生活習慣の見直しも治療の一環として重要です。プリン体の多い食品(レバー、魚卵、ビールなど)の摂取を控え、野菜や穀物中心の食生活へ切り替えることが勧められます。加えて、十分な水分補給を習慣づけることで尿酸の排出が促され、発作の予防にもつながります。さらに、適度な運動と体重の管理も尿酸値の安定に効果的です。

痛風の治療は、単なる薬だけで完結するものではありません。医師の指導のもと、生活全体を調和させながら続けることで、長期的に健康を維持し、再発を防ぐことが可能になります。

痛風でお悩みの方へ

もしあなたが痛風の診断を受けた、あるいはその予兆を感じているなら、まず知っておいてほしいのは「痛風はコントロールできる病気である」ということです。発作時の痛みは強烈ですが、適切な治療と日常管理によって再発は防ぐことが可能です。

大切なのは、痛みが収まったからといって治療をやめてしまわないこと。尿酸値の管理は「継続」が何よりも効果的であり、それにより関節の変形や腎機能の悪化などの将来的なリスクも避けることができます。

また、痛風は恥ずかしい病気ではありません。生活習慣病の一種であり、多くの人が同じような悩みを抱えています。

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