肝硬変とは

肝硬変とは、慢性的な肝臓の病気が進行し、肝臓が硬くなる病気です。慢性的な肝臓の炎症や障害が長期にわたって続くことで、肝臓の細胞が壊れ、再生を繰り返すうちに肝臓の組織が硬く変化し、正常な構造を失ってしまった状態を指します。肝臓は再生能力が高い臓器として知られていますが、長年にわたり炎症が持続すると、再生過程で線維化と呼ばれる組織の硬化が起き、やがて肝臓全体に広がります。これが肝硬変と呼ばれる状態となります。
肝硬変は初期のうちは症状があまり出ないことが多いですが、肝硬変が進行すると、肝臓本来の働きが徐々に失われ、さまざまな合併症や命に関わる状態へと発展する恐れがあります。肝硬変は元に戻らない病変であると言われているため、早期の発見や治療が重要となります。
肝硬変の症状
肝硬変の症状は進行の程度によって異なると言われています。
肝硬変の初期段階では無症状であることが多く、健康診断で肝機能異常を指摘されてはじめて気づく人もいます。しかし、病状が進行すると肝臓の機能が低下し、さまざまな症状が現れると言われています。
代表的な症状としては、全身の倦怠感、食欲不振、体重減少、黄疸、皮膚のかゆみ、足のむくみ、腹水などがあります。また、肝臓での血流が障害されることにより、門脈圧が上昇し、食道静脈瘤や胃静脈瘤といった出血しやすい状態になることもあります。また、女性では月経異常などのホルモンバランスの異常がみられることもあります。
肝硬変の原因

肝硬変の原因はさまざまですが、慢性ウイルス性肝炎、特にB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染によるものが多いとされています。肝炎ウイルスは肝臓に慢性的な炎症を引き起こし、時間をかけて肝臓の組織を破壊し、最終的に肝硬変を引き起こします。
また肝炎ウイルス以外でも、アルコール性肝障害や非アルコール性脂肪性肝炎(MASH)が肝硬変の原因になることもあります。そのほかにも自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、薬物性肝障害、代謝異常なども原因と言われています。
B型肝炎ウイルス
B型肝炎ウイルス(HBV)は、血液や体液を介して感染するウイルスで、感染すると肝臓に炎症を起こすことが知られています。B型肝炎ウイルスは、母子感染や性交渉、輸血、注射器の共有などが主な感染経路と言われています。またB型肝炎には、急性と慢性の2種類があります。急性の場合、多くは自然に治癒しますが、なかには劇症肝炎となり、命にかかわるケースもあります。一方で、乳幼児期に感染した場合は慢性化しやすく、長期間にわたって肝臓に炎症が持続すると、肝硬変や肝がんに進行するリスクが高まります。
C型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス(HCV)は主に血液を介して感染するウイルスで、輸血や注射器の使い回しがかつての主な感染経路と言われています。現在では、新たな感染は大きく減少していますが、過去に感染したまま気づかず慢性化している人も少なくありません。C型肝炎は慢性化しやすく、放置すると数十年かけて肝硬変や肝がんに進行することもあります。C型肝炎ウイルス感染がわかった場合は、早期に治療を開始することで、将来の重篤な肝疾患を防ぐことが可能となります。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH/MASH)
非アルコール性脂肪肝炎は、脂肪の蓄積に加えて肝細胞に炎症が生じたり、壊死や線維化が進行したりする状態を指します。MASHの進行は比較的緩やかですが、10〜20年の経過で肝硬変、さらには肝細胞がんへと移行するとも言われています。非アルコール性脂肪肝炎の診断は、腹部エコー検査や血液検査などが行われます。非アルコール性脂肪肝炎の治療は主に生活習慣の改善となりますが、重度の場合には薬物療法や定期的な専門医のフォローアップが必要となります。
肝硬変の診断方法
肝硬変の診断には、血液検査や腹部エコー検査があります。
血液検査
肝硬変の診断や病状の把握には血液検査が重要です。ASTやALTなどの肝酵素、ビリルビン、アルブミン、凝固因子、血小板数などを調べることで、肝機能の程度や肝臓のダメージを確認できます。また、アンモニア値や腫瘍マーカー(AFPなど)も評価の対象となり、合併症や肝がんの早期発見にも役立ちます。症状がない段階でも定期的な検査が推奨されます。
腹部エコー検査
腹部超音波(エコー)検査は、肝臓の大きさ、表面の凹凸、内部の状態を観察するために広く行われており、非侵襲的で簡便な検査となります。進行した肝硬変では、肝臓が萎縮し、表面が不整になっているのが確認されることがあります。
肝硬変の改善策
肝硬変は一度発症すると完全に元に戻すことは難しいとされています。しかし、肝硬変の原因を治療することや生活習慣を見直すことにより、進行を遅らせたり、症状を和らげたりすることは可能となります。ウイルス性肝炎であれば、抗ウイルス薬によってウイルスの活動を抑えることができます。アルコール性肝障害が原因であれば、禁酒や飲酒制限が必要となります。MASHの場合には、減量、バランスのとれた食事、運動習慣の改善が重要となります。また、肝硬変の症状を緩和するためには、塩分制限や利尿薬によって腹水をコントロールしたり、肝性脳症の予防のためにタンパク質摂取量を調整することも重要です。
腹部エコー検査の特徴
1.日本肝臓学会専門医による腹部エコー検査
当院では、日本肝臓学会専門医が腹部エコー検査を担当しています。肝臓疾患に精通した専門医が腹部エコー検査を行うことで、脂肪肝や肝硬変、肝腫瘍などの病変も見逃すことなく、的確に評価することが可能となります。
2.侵襲性の低い腹部エコー検査
腹部エコー(腹部超音波)検査は、体に負担をかけずに肝臓・胆のう・腎臓・膵臓などを観察できる検査となります。放射線による被ばくもなく、痛みも伴わないため、妊娠中の方やご高齢の方にも安心して受けていただけます。気になる症状がある方は、腹部エコー検査をおすすめしています。
3.土日の腹部エコー検査
平日お忙しい方にもご受診いただけるよう、当院では土日にも腹部エコー検査を実施しています。事前予約制で待ち時間も少なく、スムーズな検査が可能となります。平日はお仕事や家事で時間が取れない方もお気軽にご相談ください。
4.最新の腹部エコー機器を導入
当院では、高性能な最新の腹部エコー機器を導入しています。微細な病変も捉える高解像度の画像により、高精度の診断が可能となります。また、リアルタイムでの観察や血流評価も可能となり、より的確な診療へとつながります。
5.胃カメラ検査と腹部超音波検査の同日実施
当院では、胃カメラ検査と腹部エコー検査を同日に受けていただける体制を整えています。一度の来院で複数の検査を終えることができ、また食事制限も1回で済むメリットがあります。そのため、患者様の時間的・体力的負担を軽減することが可能です。
肝硬変でお悩みの方へ
肝硬変は、長年の炎症や肝疾患が原因で肝臓が硬くなり、正常な働きができなくなる病気です。肝硬変の初期は自覚症状が少なく、気づかないまま進行することもありますが、適切な治療と生活習慣の見直しで進行を遅らせることが可能となります。当院では肝臓専門医が丁寧に診察し、症状や状態に応じた治療・生活指導を行っています。些細な症状でも気になることがある場合にはお気軽にご相談ください。