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睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、私たちが眠っている間に呼吸が繰り返し止まってしまう、または著しく浅くなる病態で、放置するとさまざまな健康障害を引き起こす深刻な病気です。一晩の睡眠中に何度も呼吸が止まることにより、十分な酸素が身体に供給されなくなり、それに応じて脳や心臓などの重要な臓器にも負担がかかります。その結果、熟睡感を得られないまま朝を迎えることが多く、日中に強い眠気やだるさを感じることがよくあります。

この病気は単なる「いびき」や「眠りの浅さ」だけでは済まされず、無自覚のうちに生命の危険を伴う可能性もあるため、早期発見と適切な治療が求められます。睡眠時無呼吸症候群には大きく分けて3つのタイプが存在し、それぞれ原因や対処法が異なります。

もっとも一般的なのは「閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)」で、これは気道が物理的に狭くなったり閉塞したりすることで空気の通り道がふさがれ、呼吸が止まるというものです。肥満や扁桃肥大、舌の位置、あごの小ささなどが大きく関係しています。

次に「中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSA)」がありますが、こちらは気道自体に問題があるわけではなく、呼吸を制御している脳の中枢神経系が一時的に指令を出さなくなることで、呼吸が止まってしまうタイプです。高齢者や心不全を抱える患者に多く見られる傾向があります。

そして3つ目は「混合型」で、閉塞型と中枢型の両方の特徴を併せ持ち、より複雑な症状を示すため、診断と治療には専門的なアプローチが必要です。

私たちが眠っている間、呼吸は無意識に自律神経によってコントロールされています。しかし、SASではこの自然なリズムが何度も遮断され、血中の酸素濃度が下がると脳が危険を察知して目を覚まそうと指令を出します。この覚醒は非常に短く、本人が意識することはほとんどありませんが、そのたびに眠りが浅くなり、結果的に睡眠の質が著しく低下します。これが毎晩何十回、場合によっては百回以上も繰り返されるため、朝起きたときに「よく眠れた」と感じることができず、慢性的な疲労や集中力の欠如、さらには記憶力の低下にまでつながっていくのです。

また、睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病とも深く関係しています。長期間にわたって放置された場合、高血圧や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などの合併症のリスクが著しく高まり、日常生活の質を著しく損なうだけでなく、生命にも関わる危険性をはらんでいます。それにもかかわらず、この病気は非常に発見されにくく、多くの人が無自覚のまま長年過ごしているのが現状です。実際、日本国内ではおよそ300万人以上が罹患していると推定されているものの、その半数以上は診断を受けていないと言われています。

このように睡眠時無呼吸症候群は、単なる睡眠障害ではなく、身体全体に深刻な影響を与える可能性のある疾患であることを正しく理解することが大切です。質の高い睡眠を守り、健やかな生活を送るためには、SASのメカニズムとそのリスクを正確に把握し、早期に対策を講じることが求められます。

睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時無呼吸症候群の最も特徴的な症状は、眠っている間に繰り返し呼吸が止まることで生じる日中の強い眠気です。しかしこの病気の厄介なところは、本人がその症状に気付きにくい点にあります。多くの人は、「よく寝ているはずなのに疲れが取れない」「朝から頭がぼんやりしている」「集中力が続かない」といった感覚を持ちながらも、まさか自分が睡眠障害を患っているとは思いません。

睡眠時無呼吸症候群では、脳が酸素不足に陥るたびに短時間の覚醒を繰り返すため、深い眠りが得られません。その結果、目が覚めたときに「しっかり寝た」という感覚が得られず、日中の活動にも支障をきたします。特に、車の運転中や会議の最中、食事中など、本来眠くなるはずのない場面でもうとうとしてしまうことがあり、これが重大な事故を引き起こす要因にもなっています。

また、朝起きたときに頭痛がする、喉が乾いている、口が異常に渇いているといった症状も、睡眠時無呼吸症候群に見られる典型的なサインです。睡眠中に口呼吸が多くなることで、口内が乾燥し、さらには睡眠時の酸素不足が脳を刺激することで頭痛が誘発されます。そして、本人よりも先に家族が異常に気づくことも少なくありません。寝ている間の大きないびき、呼吸の停止、体を何度も動かすなど、明らかに普通ではない睡眠の様子を目にして、初めて病気の存在を疑うというケースが非常に多いのです。

このように、睡眠時無呼吸症候群の症状は多岐にわたり、しかもそれが他人からの指摘によって初めて明らかになるという点で、発見が遅れがちになります。本人が異常に気付かず、無自覚のまま何年も過ごしてしまうことが多いため、日々の睡眠の質や日中の体調に違和感を覚えたときには、早めに専門医に相談することが何よりも大切です。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群の発症には、複数の原因が複雑に絡み合っていますが、最も多いのが気道が物理的に狭くなる「閉塞型」のタイプです。特に中年以降の男性に多く、生活習慣や体型、解剖学的構造、さらには遺伝的要因が関係しています。中でも肥満は最も影響が大きいリスク因子とされており、体重が増加すると首回りに脂肪がつきやすくなり、寝ている間に気道を圧迫して呼吸を妨げてしまいます。

また、あごが小さい、舌が大きい、鼻中隔が曲がっている、扁桃腺が肥大しているといった骨格や構造上の問題も、空気の通り道を狭くしてしまうため、呼吸が止まりやすくなります。これらの特徴は生まれつきの場合もありますが、成長過程や加齢によって変化することもあり、若い頃には無症状でも中年以降に発症することも珍しくありません。

性別も原因の一つとして知られており、女性よりも男性の方が発症率が高いことが分かっています。ただし、女性も閉経後にはリスクが上がり、ホルモンバランスの変化が気道の筋肉に影響を与えるため、年齢とともに注意が必要になります。さらに、家族に睡眠時無呼吸症候群の人がいる場合には、遺伝的な要因も関係している可能性があり、自分にもその傾向があると考えておいた方がよいでしょう。

生活習慣もこの病気に密接に関係しています。飲酒や喫煙は気道の筋肉を緩ませたり炎症を引き起こしたりするため、症状を悪化させる原因になります。また、寝る直前の食事や過度なストレスも、睡眠の質に影響を与えるため、結果的に無呼吸の頻度が高まることがあるのです。

このように、睡眠時無呼吸症候群の原因は非常に多様で、単一の要素に絞ることが難しいのが特徴です。だからこそ、自分の生活や体の状態を見直すことが、発症を防ぐ第一歩になります。

睡眠時無呼吸症候群の診断方法

睡眠時無呼吸症候群の診断は、単なる問診だけでは不十分であり、正確な検査を通じて睡眠中の呼吸状態を把握する必要があります。多くの患者は「よく眠れない」「日中眠くなる」といった漠然とした不調を訴えて病院を訪れますが、医師はまず、患者の自覚症状と家族からの情報を詳しく聞き取り、SASの可能性があるかどうかを判断します。

最初に行われるのが「簡易検査」と呼ばれるもので、これは患者が自宅で装着するタイプの小型の機器を使用し、一晩の睡眠中に呼吸の状態や酸素濃度、いびきの有無などを記録します。この検査は比較的手軽に行えるため、初期スクリーニングとして広く用いられています。検査結果から、一定以上の無呼吸・低呼吸の回数が認められた場合、次の段階である「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」に進むことになります。

終夜睡眠ポリグラフ検査は、睡眠の質と呼吸をより詳細に分析するために行われる精密検査であり、専門の医療施設に一泊して、様々なセンサーを身体に取り付けた状態で睡眠します。この検査では脳波、心電図、眼球運動、筋電図、呼吸の流れ、胸と腹の動き、酸素飽和度など、多項目にわたる生体信号を同時に記録します。これにより、睡眠の深さや呼吸停止のタイミング、それがどのタイプの無呼吸であるかといった重要な情報が明らかになり、正確な診断につながります。

また、検査結果から「無呼吸低呼吸指数(AHI)」という指標が算出されます。これは1時間あたりの無呼吸または低呼吸の回数を示すもので、この数値が5以上である場合にSASと診断され、数値が高くなるほど重症度も増していきます。軽症では5~15、中等症では15~30、重症では30以上とされており、それに応じて治療法が選択されます。

このように、睡眠時無呼吸症候群の診断は、客観的なデータに基づいて慎重に行われます。症状があるにもかかわらず放置すれば、知らぬ間に日常生活や健康に重大な支障をきたすため、少しでも心当たりがある場合には、早めの受診と検査が重要になります。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法

睡眠時無呼吸症候群の治療法は、その原因や重症度によってさまざまな選択肢があります。もっとも効果が高く、世界的に標準治療とされているのが「CPAP(シーパップ)」と呼ばれる持続陽圧呼吸療法です。この治療では、鼻に装着する専用のマスクから空気を送り込み、気道に一定の圧力をかけることで、気道の閉塞を防ぎます。これにより、睡眠中の呼吸が安定し、無呼吸がほとんど起こらなくなります。CPAPを毎晩使用することで、日中の眠気や頭痛などの症状が改善されるだけでなく、高血圧や心臓病の予防にもつながることが多く報告されています。

軽度から中等度の患者には「口腔内装置(マウスピース)」を用いた治療も効果的です。これは就寝時に装着する器具で、下あごを前方に固定することにより舌の位置が後退するのを防ぎ、気道を広げる働きがあります。CPAPほどの強制力はありませんが、機器が小型で持ち運びもしやすいため、旅行や出張の際にも手軽に使用できるという利点があります。

さらに、気道の構造そのものに問題がある場合には、外科的な治療も検討されます。たとえば、扁桃腺の肥大や鼻中隔の湾曲が原因であれば、それらを切除・矯正することで空気の通り道を広げ、症状を緩和することが可能です。ただし、手術は身体への負担も大きく、必ずしも効果が保証されるわけではないため、医師との十分な相談のうえで慎重に判断する必要があります。

また、生活習慣の見直しも重要な治療の一環です。特に肥満はこの病気の最大要因の一つであり、減量によって症状が大幅に改善するケースも多く見られます。食事の改善、定期的な運動、規則正しい睡眠リズムを意識することが、治療の効果を高めるカギとなります。アルコールや睡眠薬の使用を控えることも、呼吸の質を保つうえで不可欠です。

治療は一過性のものではなく、継続が必要なケースが多いため、患者自身の意識と生活改善が成功の鍵を握っています。

睡眠時無呼吸症候群でお悩みの方へ

もしあなたが、日中の強い眠気や朝の頭痛、いびきの指摘、疲労感が取れないといった症状に悩まされているなら、それは単なる「疲れ」や「ストレス」ではなく、睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。この病気は静かに進行し、気付かないうちに心身を蝕むため、何となく不調を感じたときこそ、専門の医師に相談する絶好のタイミングです。

現代の医療では、早期発見と正しい治療により、睡眠時無呼吸症候群は十分にコントロール可能な病気とされています。CPAPやマウスピースといった治療法は高い効果が証明されており、使い続けることで生活の質は格段に向上します。実際、多くの患者が治療開始後、「仕事の効率が上がった」「朝の目覚めがすっきりした」「体重が減って血圧も安定した」といった前向きな変化を実感しています。

当院では、専門の医師があらゆる観点から治療・その後の生活をフォローいたします。お気軽にご相談下さい。

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